海外版スターログ #151 デニス・フォレスト氏インタビュー翻訳
翻訳提供: かおり様
「マルザーを演じているときの僕は、可笑しな衣装でセットを歩き回る奴らの一人という感じだね」滑らかなアクセントでデニス・フォレストは冗談を言ってみせる。正しく発音すると”デニー・フォレイ”というこのフレンチカナディアン俳優は、控え室に座って大雨が過ぎ去るのを待っている。彼の控え室のドアに皮肉たっぷりに並んでいるのは、どれも悪名高い独裁者たちだ。細身に白い肌、どこか禁欲的な印象のあるフォレストの外見はでっぷりと太った独裁者たちとはまるで違っているのだが、彼こそが「エイリアン・ウォーズ」第2シーズンの新しい悪役だ。
「マルザーはマニュエル・ノリエガと水爆の産みの親、エドワード・テラーを足して2で割ったような人物なんだ」彼は続ける。「マルザーはひどい専制君主で、自らの権力のために他人を犠牲にするのが好きだからね。まるでアステカ族かマヤの先住民の時代か何かみたいに、できる限りの魂を集めようとしている非情な奴なんだよ。そして権力を保ち続ける方法は専制君主としての自分の神聖さ、不滅さにあると知っている。不滅という考えは最終的にどこに辿り着くかも分からないまま歩き続けなければいけない道のようなもので、とても東洋的な思想だ。錬金術とか、シャーマニズムとでもいうのかな。”エターナル”は不滅で、全ての答えを知っている。でもマルザーは不滅じゃない。ただ答えを推測することしかできないんだ。彼の人間性について僕にできることはけっこう限られているもので、例えば目を痙攣させるみたいな癖を考えることはできなかった。シーズンを通してキャラクターに一貫性がないといけないからね。この役について学んだのは、製作者側はできるだけシンプルな口調―今、僕が君に話しているようにね―を好むということ。時代性のある話し方や大げさな話し方を嫌うんだ。控えめで自然な演技が一番というわけだ」
凶悪なエイリアンを演じるということは、どんな俳優にも通じる難関のようだ。製作者との会話から2ヵ月半が経った今でもフォレストはマルザー役を演じるうえで問題を抱えているという。「6話分の撮影が終わった後、マルザーのキャラクターがまだまだ不安定で、しっかりとした人間性を築くにはもっと明確な土台が必要なことに気付いた。彼には目に見える平静心が必要なんだ。彼はある意味ではとても弱いし、また同時に強い人間でもある。僕はマルザーを人からからかわれる役目の、いわば操り人形のような存在だと思っているんだ。だって自分をよりファシストに見せるために人を挑発するような奴はどう見ても「倒錯者」としかいえないからね。僕は彼はもっと権力の意味自体を投影するキャラクターであるべきだと思うし、もっと緊張感もほぐれている方がいいと思う。それに自分がしなくとも他人が決断してくれると頼っているけど、実際は全て彼が決断しなくちゃいけない。彼自身が”エターナル”と直接的に関わる必要があるんだ」
広いセットの隅にある窮屈な音声ブースに座っていると、フォレストの小さくて物静かな声は聞き取るのがやっとという感じだ。「僕が考えるに、モースライ人の興味は永遠に続く完璧さにあると思う。すごくファシスト的な目標だよね。ある決まった物の見方や考え方しかできない。それも全ては自分たちの不滅さを保つためだ。マルザーはそのためには何をも壊すだろうし、誰をも殺すだろうね。ただ、そういう極端な考え方というのは裏で神秘的な力が働いているものだ。だからマルザーは山伏のような奴だと言っていい。ひどく冷酷だけれど尊敬に値する人物でもあるんだ」
数ヤード離れたところで予定通りの爆発がモースライ人の研究所を襲い、ばらばらになったエイリアンの器材や研究員達を灰にする。「この役を演じるには、ある種の強迫的なエネルギーが要るんだよ」考え込んだ様子のフォレストはモースライ人の着る灰色のチュニックの皺を伸ばしながら、低く落ち着いた声で語る。「なんというか、世界を支配するには偏執的なところがないといけないんだ。僕はマルザーに人間性の欠けた奴でいてほしい。ねじ曲がった神秘性を秘めた奴でいてほしいんだ。それに皮肉は言わないような奴がいいな。皮肉なんていうものは人間的だからね。人類とは違う、より静かで、率直で、平然とした男なんだ。だから例えば『兵士は殺せ、指導者は生かしておけ』なんていう台詞を言わなきゃいけないときは演じるのが難しいよ。街角で女性に挨拶するのとはわけが違う。やり過ぎるのは良くない。やり過ぎるとかえって信憑性がなくなるし、観客に好かれるのも難しくなるんだ」
俳優デニス・フォレストの悪役としてのキャリアには目を見張るものがある。TVシリーズ「13日の金曜日」のシリーズ最初のエピソードで妻を事故で失ってから狂気にとりつかれた夫役を演じたあとも、ゲスト悪役として計3話に出演している。トロントにあるライアソン・シアター・スクールを卒業して以来「ナイトウォッチ」などで魅力的とはいえない偏執的なキャラクター達を演じ、また「マイケル・アイアンサイドのトラップ・ゲーム」ではチクート役を演じて悪役としての実績を見せつけた。「人の目っていうのは文字通り、他人を魅了するものなんだ」フォレストは自らのテクニックについて語る。「観客は俳優の目を追う。逆に言えば、目で悪役の世界観を作り出すことができればこっちのものなんだ。そしてそれができるかどうかは、自分自身の中にある悪意をどこまで画面に出せるかにかかってくる。奇妙な話だけど、僕は悪役を演じるとき、そして観客に恐怖感を持ってほしいときは、その人物の感情を爆発させるようなイメージを想像するようにしているんだ。誰かが苦しんでいる様子なんかがいい例だね。善人にとっては見たくない光景だけど、狂人ならそれを見てほくそ笑むだろうからね」
「アヤトラ・ホメイニはそういう想像をするときに役に立ったし、いい刺激になった。彼は数千もの命を犠牲にしたんだ。ダンテ風の悪夢とでも言うべきかなー民衆扇動家は若者の命や国を犠牲にして、その行為自体を自らの力と考えるものだ。これは扇動家だけじゃない、ノスフェラトゥなんかもそうだ。いつか吸血鬼も演じてみたいね。それもただ人の首から血を吸うだけの吸血鬼じゃなくて、人の魂ごと吸い取ってしまうような奴がいい。僕はアヤトラの作り上げた冷静と狂乱は似通っているはずだと思うんだ。他人の情熱を操ることができたら、それはもうマルザーのような専制君主にとって夢のようなことだと思うよ。想像してごらんよ。数万の人間が君のために行進して、そして君のために死ぬんだ。まさにエゴの塊のようなエネルギーだよ!それこそが前にも言った強迫観念だ。そういうものを持つキャラクターを演じたいんだよ」
「もし自分の普段の生活で言うと」彼はフランス系らしい雰囲気のある目を輝かせながら付け足す。「ファンクラブがほしいかな。それもほんとに小さなものでいい。あまり手紙を書いたりするのは好きじゃないから」
彼の演じる悪役には常にタイプというものが存在している。「この役柄の裏には生贄とか、そういう類の考え方が潜んでいるわけなんだ」とフォレストは説明する。「それはマヤの先住民を連想させるような、宇宙のエネルギーを緩和させるために人を犠牲にするやり方だ。僕は生贄についての本を探していて、ちょうど近年起こったコカインを栽培する組織が人間の生贄を捧げたっていうおかしな儀式についての本を見つけたばかりなんだ。あとは他にエドワード・テラーも参考にしてる。水爆なんかを生み出せる才能は、人類にとって間違いなく脅威だよ。俳優として何が悪の基盤になっているかを知ることは大事な課題だね」
「破壊的な人間性の典型として僕はアドルフ・ヒトラーやアヤトラ・ホメイニに関心を寄せてきた。そうやって自分の役柄を作っていったわけだけど、それでも彼らをどう理解するかは僕の問題だ。僕自身の考え方が変わったわけじゃないからね。シリーズもののテレビ番組をやるのは難しいことだよ。自分ではキャラクターを作り上げた気になっていても、最終的には自分を演じているだけだったりすることもあるんだ」
悪役俳優の例にもれず、フォレストも悪役の方が楽しいと思っているようだ。「悪役俳優っていうものはね」彼はどこか楽しげに切り出す。「村のまじない師みたいなものかな。悪役俳優は悪人のマスクを被って、他人の悪意や恐怖心ー誰もが持っているけど、誰もが追い払いたいと思っているような感情ーをかりたてる。僕がマルザーに吹き込もうとしているのは、まさにそういう効果なんだ。マルザーは人の苦しみに無関心だ。無関心というのは僕に言わせれば何より深い罪だよ。僕が被ってみせたいというか、マルザーを演じるのに必要だと思うのはそういった失望と死に直面したマスクということなんだ」
「僕が演じている、例えば5万人を洗脳することが魅力的だなんていう考えは確かに狂ってるかもしれないね」フォレストは肩をすくめながらそう認める。「でも人々はテレビに映るものに洗脳されているじゃないか。僕はよく旅に行くんだけど、アムステルダムに行ったときはフィラデルフィアから来たっていう女の子に『あなたは「13日の金曜日」で蜂を使って女の子を殺したエディじゃない、ここで何をしてるの?』なんて聞かれたりね」
「そういう考えに取りつかれると、人はよけいに他人を恐がらせてしまうものだ。無意識のうちに他人を睨みつけたりしてね。僕は妙な目つきをしてるだろ?ちょっと前に映画館に行って、知らない人に『チケットはありますか?』などと簡単な質問をしてみたんだ。彼はどうしたらいいか分からないといった様子だったよ。こいつは警官なのか?それとも警備員か?と思っていたんだろうね、彼は答えたくないと言わんばかりに下を向いているばっかりだった」
「それから僕は声に出して台詞を読むのが好きなんだ」彼は言う。「覚えなきゃいけない台詞があるから、バイオリニストが練習するように自分も練習しようと思うわけだ。YMCA(スポーツジム)に行くと僕は体を鍛えながら、同時に台詞も喋っているんだよ。周りは僕のことをキチガイと思ってるだろうね」
フォレストもモースライ人の生活についてはまだまだ知らないことが多いようだ。マルザーにはリラックスする方法があるかどうかを聞いてみる。例えば国土分割のテクニックについての本を読んだりするとか?「それはいいね」彼はそう言ってみせる。「それか何の罪もない人々を痛めつけたりするかもしれないね。きっとモースライ人は娯楽として、人類には理解できない数学を解いたりするんだろう。僕らの能力については、母星から地球に来たときにエネルギーが人体に吸い込まれたから、はっきりとは分からないんだ。僕は元々の形は星のような、あるいは火のようなエネルギーだったんじゃないかと思っている。証拠はないけどね。僕、というよりはマルザーだけど、はこうやって生まれてきたような奴だからね」そう言って彼は手を広げてみせると、ひょろりとした長身の体を示す。
「僕らはまだモースライ人がどうやって眠るのか、第一何をする奴らなのかさえ全く分かっていないんだよ。それもきっと計画を練ったり陰謀を企てたり、そんなところだとは思うけれどね。6話のうち、マルザーは一度も座ったことがないんだ。食事もしたことがないけど、菜食主義だっていうことは分かっている。だから僕らは今までに見せたものより、もっと深い感情を表す必要があると思う。僕だったらモースライ人が人類の苦しみとか、幸せを理解するために観察したりするところが見たいね。彼らがどう人類を分析するか、きっと興味深いものになるはずだよ」
フォレスト自身、製作者側の自分の演技に対する理解度には満足していないようだ。「まだ脚本に書かれたものを映像化することだけでいっぱいだからね」アシスタントディレクターは夜の撮影が遅いと、撮影に関する問題点を明らかにした。技術者たちもそれに同調する。カメラは苦しみながら死んでいくクローンを撮影する位置合わせに追われ、薄気味悪い黄色と緑色のライトは巧妙に作られたラテックス製のスクリーンや、水に覆われた床をぼんやりと灯している。暗いモースライ人の研究所は巨大なエイリアンの機械だらけだ。しかし、現場の雰囲気は陽気にみえる。グリップ担当が通り過がりに「ここにいるとキング・コングの鼻の中を歩いてるみたいな気分になるよ」と言うと、フォレストは笑顔を見せた。
「すごくいいクルーばかりなんだ」と彼は言う。「彼らを楽しませるのが好きだね。でも緑のネバネバを飛び越えたりだとか、眼帯をつけるみたいなことはあったけど、悪ふざけをしたことはないよ。幸運なことにね。そういう時間がないんだ。リハーサルのときは下らない冗談を言ったりすることはあるけど撮影が始まればみんなすごく真剣なんだ」
シーズンを新たにしての数々の変更にも関わらず、「新人」フォレストと前シーズンを乗り越えたジャレッド・マーティンやリンダ・メイソン・グリーンとの関係は問題なさそうだ。「まだ彼らと一緒の撮影はしていないんだ」とフォレストは明かす。「でも彼らの話はするよ。セットを移動するときにばったり会ったりしてね。彼らの方が大きいウィネベーゴを使わせてもらってるみたいだよ」
シーズンの変更自体に関してはフォレストは多くを語らない。「第1シーズンはあまり見てなくてね」とためらいがちに言う。「でも前シーズンのエイリアンはただの巨大なマペットだった。あんな衣装じゃ僕は納得いかないよ。今シーズンになって僕らはみんな背が高くて細い外見になった。これで観客は僕らがエイリアンだと信じるだろう。皮肉なことに、昔の恋人には丸い頭のせいで”エイリアン・ヘッド”って呼ばれてたことがあった。今はそれで生計を立ててるってわけさ」
さらにフォレストは「マルザーは今までにないリーダー」だと語ってくれた。「例えば、今まで僕らはドラッグをやるな、とか他人に話を聞いてもらうような人になれ、とか言ってくれる人はいなかった。今ではスポーツ選手までがドラッグに漬かってる。僕らには政治であれ精神的なものであれ、本当の意味で僕らを指導してくれる救世主がいない。永遠に続く何かを築けるような人がね。僕はマルザーの役目は主人公の敵でいるだけとは思っていないよ。悪役をそうやって単純化するのは嫌いなんだ。だから僕はマルザーという優れた種を、もっと完璧な人物にするつもりで演じている。僕が一番恐れているのは他人が僕の人間性を、演技だけで判断するということ。僕が作り出すものは「空想」でしかないんだから。映画スターが襲われるなんていう事件があると悲しくなるね。でもマルザーという奴は、人をファシズム的な暴力に走らせるキャラクターだと言えないこともない。僕の望むマルザーは、君の鳥肌を立たせるけど、君に妹を殺そうと思わせたりはしないマルザーだよ。街で僕を見た子供に泣いてほしくはないからね」
Japanese translations was made by Kaori.
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Kaori
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